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認知症と相続対策の10のポイント2025.12.04

1. 遺言書を作成する

目的と効果: 遺言書は、被相続人(財産を残す人)が亡くなった後の財産の分け方を法的に指定する文書です。認知症により意思能力を失うと作成できなくなるため、元気なうちに作成することが絶対条件です。遺言書があれば、遺産分割協議が原則不要となり、認知症の相続人がいても手続きがスムーズに進みます。

押さえるべき点: 最も確実なのは公正証書遺言です。公証役場で公証人が作成し、原本が保管されるため、偽造や紛失の心配がなく、また作成時に医師の診断書などを準備することで、後から「認知症で無効だ」と争われるリスクを大幅に減らせます。

2. 家族信託(民事信託)を活用する

目的と効果: 財産管理と円滑な承継を両立させる、柔軟性の高い制度です。財産の所有者(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に財産を託し、その管理・処分を任せます。委託者が認知症になっても、受託者が凍結されることなく財産を管理・運用できます。

押さえるべき点: 不動産の売却や積極的な資産運用(アパートの建て替えなど)まで家族の判断で実行できる点が、法定後見制度にはない最大のメリットです。また、一代限りの相続だけでなく、「長男の次は孫へ」といった二次相続以降の承継先も指定できます。

3. 任意後見制度を契約する

目的と効果: 本人が、将来自分の判断能力が衰えたときに備え、誰に(任意後見人)、どのような事柄(財産管理や介護の手配など)を任せるかを、元気なうちに契約(任意後見契約)で決めておく制度です。

押さえるべき点: 契約は公正証書で作成します。契約締結後すぐに効力が発生するわけではなく、本人の判断能力が低下した後に家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで、初めて効力が発生します。本人の意思が最大限尊重される点が特徴です。

4. 生前贈与を行う

目的と効果: 相続税の課税対象となる財産を生きているうちに減らし、相続税の節税を図ります。

押さえるべき点:

暦年贈与: 年間110万円までの贈与であれば、贈与税が非課税になります。ただし、**「毎年決まった時期に決まった額」**を繰り返すと、初めからまとまった額を贈与するつもりだったとみなされ、贈与全体に課税されるリスク(定期贈与)があるため、契約書を作成し、毎年贈与の意思を確認するなど慎重に行う必要があります。

相続時精算課税制度: 2,500万円までの贈与が非課税となる制度で、将来の相続時に贈与分を相続財産に加えて相続税を計算します。令和6年度の税制改正により、毎年110万円までの基礎控除が創設され、使いやすくなりました。

5. 家族間でよく話し合う

目的と効果: 法律上の対策を講じる前に、家族間の理解と合意形成が最も重要です。財産の分け方、今後の介護体制、延命治療の希望など、被相続人の意思を家族全員で共有することで、将来の不満や相続人同士の対立(争族)を防ぎます。

押さえるべき点: 認知症の兆候が見られる前に、**財産目録(後述)**を基に具体的に話し合う場を設けることが大切です。可能であれば、専門家(弁護士や司法書士など)に立ち会ってもらい、中立的な立場から議論を整理してもらうのも有効です。

6. 財産を整理し目録を作成する

目的と効果: 認知症になると、本人が自分の財産を把握できなくなり、家族も全容が分からなくなる可能性があります。全ての財産(不動産、預貯金、株式、保険、借金など)の一覧表(財産目録)を作成しておくことで、必要な手続きの漏れを防ぎ、対策の土台を築きます。

押さえるべき点: 金融機関名、支店名、口座番号、保険証券の保管場所、インターネットバンキングのID/パスワードなど、具体的な情報までを記載し、信頼できる家族と共有しておきます。

7. 預貯金口座に関する委任状の作成

目的と効果: 認知症と診断されると、銀行は口座名義人の意思確認ができないと判断し、預金を凍結します。これにより、生活費や医療費の引き出しができなくなる事態を防ぐための暫定的な対策です。

押さえるべき点: 銀行が独自に定める代理人による取引(委任状)の制度を利用します。ただし、この委任状は銀行側の判断で停止される場合があるため、あくまで一時的な対策と捉え、家族信託や任意後見制度といった抜本的な対策を並行して進める必要があります。

8. 不動産の組み換え・整理

目的と効果: 地方の山林や、将来的に価値が下がる可能性のある空き家など、管理に手間がかかる「負の財産」を、意思能力があるうちに売却し、管理しやすい金融資産などに組み替えます。

押さえるべき点: 不動産の売却には売買契約の締結が必要で、認知症発症後は売却ができなくなります。結果として、相続人が管理の負担や固定資産税の負担を強いられることを避けるため、生前の整理が非常に有効です。家族信託を利用すれば、信託財産として家族に売却権限を与えることができます。

9. 医療・介護に関する意思を明確にする

目的と効果: 財産管理だけでなく、本人がどのような医療・介護を受けたいかという身上監護に関する意思を明確にしておきます。これにより、家族が本人の代わりに施設入所契約や治療方針の同意などを行う際の基準となります。

押さえるべき点: 任意後見契約に盛り込むか、あるいは任意代理契約として医療・介護に関する手続きに限定した代理権を与える契約を結びます。延命治療に関する意思(リビングウィル)についても家族と共有しておきましょう。

10. 専門家に相談する

目的と効果: 相続対策は、法律(民法)、税金(相続税法)、不動産登記など、幅広い専門知識が必要です。自己判断で行うと、法的に無効になったり、かえって税金が高くなったりするリスクがあります。

押さえるべき点:

司法書士: 遺言書作成(公正証書)、家族信託、任意後見契約、不動産登記の専門家。

税理士: 相続税・贈与税の試算、節税対策、財産評価の専門家。

弁護士: 相続トラブルの予防、発生後の紛争解決、法的な助言の専門家。

行政書士:遺言書作成(公正証書)、任意後見契約の専門家

これらの専門家と連携しながら、最適な対策をパッケージで構築することが重要です。



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