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【さいたま市】遺言書と生命保険を活用した相続準備:争族を防ぎ、大切な人を守るための5つのポイント2025.07.03

相続は、誰にとっても避けて通れないテーマでありながら、その準備を怠ることで、残された家族が「争族」という辛い現実に直面するケースが少なくありません。特に、核家族化や少子高齢化が進む現代において、相続財産の種類や家族構成の多様化は、従来の相続の枠組みでは対応しきれない問題を引き起こす可能性を高めています。


1. 遺言書で意思を明確化し、争いを未然に防ぐ

相続準備において、まず第一に検討すべきは「遺言書」の作成です。遺言書は、被相続人の最終的な意思を法的に有効な形で残すことができる唯一の手段であり、その最大の目的は「争族の防止」にあります。

なぜ遺言書が必要なのか?

日本の民法では、法定相続分が定められていますが、この法定相続分通りに分割することが必ずしも最善とは限りません。例えば、家業を継ぐ長男に多くの財産を継がせたい、特定の相続人には特に手厚く分け与えたい、あるいは相続人以外にお世話になった人に財産を遺したいといった個別の意思は、遺言書がなければ実現できません。

遺言書がない場合、相続人全員での遺産分割協議が必要となります。しかし、相続人それぞれの主張が異なる場合や、遺産の内容が複雑な場合、協議がまとまらず、家庭裁判所での調停や審判に発展するケースも少なくありません。このような争いは、精神的負担だけでなく、多大な時間と費用を要し、何よりも家族間の絆に深い亀裂を生じさせる原因となります。

遺言書の種類とそれぞれの特徴

遺言書には主に以下の3種類があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合ったものを選択することが重要です。

  • 自筆証書遺言:
    • 特徴: 遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印することで作成できます。費用がかからず、手軽に作成できる点がメリットです。
    • 注意点: 法律で定められた要件を満たさない場合、無効となるリスクがあります。また、紛失や偽造・変造のリスク、発見されないリスクも存在します。2020年7月からは法務局での保管制度が始まり、これらのリスクを軽減できるようになりましたが、それでも内容の不備による無効化には注意が必要です。
  • 公正証書遺言:
    • 特徴: 公証役場で公証人が遺言者から聞き取り、作成する遺言書です。証人2名以上の立ち会いが必要です。
    • 注意点: 公証人手数料がかかりますが、専門家が作成するため、形式不備による無効のリスクが極めて低く、原本が公証役場に保管されるため、紛失や偽造・変造の心配がありません。最も確実な方法として推奨されます。
  • 秘密証書遺言:
    • 特徴: 遺言者が作成した遺言書を封印し、公証役場でその存在を証明してもらう形式です。遺言書の内容は秘密にできます。
    • 注意点: 公証人が内容を確認しないため、形式不備による無効のリスクは残ります。また、死亡後の検認手続きが必要です。あまり利用されることはありません。

相続財産の種類、相続人の状況、ご自身の意思の複雑さなどを考慮し、専門家(弁護士、司法書士、行政書士など)に相談しながら、適切な形式で遺言書を作成することをお勧めします。


2. 生命保険で特定の相続人に確実に財産を渡す

生命保険は、遺言書と並び、相続準備において非常に強力なツールとなります。特に、「特定の相続人に確実に財産を渡したい」という明確な意思がある場合に、その力を発揮します。

生命保険が相続において優れている点

  • 受取人固有の財産: 生命保険の死亡保険金は、原則として受取人固有の財産とされ、被相続人の遺産とは区別されます。そのため、遺産分割協議の対象とならず、相続人全員の同意がなくても、指定された受取人に直接支払われます。これは、遺言書で特定の相続人に財産を多く残したい場合や、相続人ではないが特定の個人に財産を遺したい場合に非常に有効です。
  • スピーディーな資金確保: 死亡保険金は、相続開始後比較的短期間で受取人に支払われるため、相続税の納税資金や、残された家族の当面の生活費として活用できます。特に、不動産など換金に時間がかかる財産が多い場合に、流動性の確保に役立ちます。
  • 相続人の範囲外への財産移転: 生命保険の受取人は、必ずしも法定相続人である必要はありません。例えば、内縁の妻や、生前に多大な世話になった知人など、法定相続人ではないが財産を遺したい相手を指名することが可能です。ただし、遺留分を侵害する可能性や、税法上の問題が生じる可能性もあるため、専門家への相談が必須です。
  • 非課税枠の活用: 死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。この非課税枠を最大限に活用することで、相続税の負担を軽減することができます。

生命保険を活用した具体的なケース

  • 特定の相続人への優先的な財産分配: 事業承継のために後継者である長男に多くの財産を遺したいが、他の兄弟との公平性も考慮したい場合、長男を受取人とする生命保険に加入することで、遺産分割とは別に長男に資金を渡すことができます。
  • 相続税の納税資金の確保: 相続財産の大部分が不動産で構成されており、換金が難しいと予想される場合、死亡保険金を納税資金として活用できるよう、相続人を受取人とする生命保険に加入します。
  • 遺留分対策: 遺言書で特定の相続人に全ての財産を集中させる場合、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。その際、遺留分を侵害される可能性のある相続人を受取人とする生命保険に加入することで、遺留分侵害額請求への備えとすることができます。

3. 生前贈与と組み合わせた計画的な相続税対策

遺言書と生命保険に加えて、生前贈与を計画的に活用することで、より効果的な相続税対策が可能になります。

生前贈与のメリット

  • 財産の移転時期をコントロールできる: 生前贈与は、被相続人が生きている間に財産を移転させるため、贈与の目的や時期、金額などを自由に設定できます。
  • 相続税評価額の引き下げ: 贈与によって財産が減少すれば、将来の相続財産全体の評価額が下がり、結果として相続税の負担を軽減できます。
  • 非課税枠の活用: 贈与には年間110万円の基礎控除があり、この範囲内であれば贈与税はかかりません。長期間にわたってこの非課税枠を活用することで、多額の財産を非課税で移転させることが可能です。
  • 教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与: 特定の目的のために一括で多額の贈与を行う場合、一定の要件を満たせば非課税となる特例もあります(教育資金一括贈与の特例、結婚・子育て資金一括贈与の特例)。

生前贈与と遺言・生命保険の組み合わせ

  • 遺言書との連携: 遺言書で将来の遺産分割の方針を示しつつ、生前贈与で先行して財産の一部を移転させることで、よりスムーズな相続が期待できます。例えば、特定の相続人への先行的な支援や、将来的に評価額が上昇する可能性のある資産(非上場株式など)の早期移転に有効です。
  • 生命保険との連携: 生前贈与で得た資金を、生命保険料の支払いに充てることで、新たな相続税対策の「種銭」とすることも可能です。例えば、孫への教育資金贈与を行った後、その孫を受取人とする生命保険に加入させ、贈与された資金で保険料を支払ってもらうといった方法も考えられます。
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生前贈与の注意点

  • 「名義預金」のリスク: 贈与を行ったつもりでも、実態が伴わない「名義預金」と判断されると、贈与が成立せず、相続時に相続財産とみなされ、相続税が課税される可能性があります。贈与の事実を明確にするため、贈与契約書の作成や、贈与された資金の管理を贈与を受けた側が行うなど、客観的な証拠を残すことが重要です。
  • 相続開始前3年(または7年)以内の贈与加算: 相続開始前3年以内(2024年1月1日以降の贈与から段階的に7年に延長)に贈与された財産は、相続税の課税対象となる「生前贈与加算」の対象となります。この期間を考慮した計画的な贈与が必要です。

4. 財産目録の作成と相続財産の把握

相続準備において、自身の財産を正確に把握し、リストアップすることは非常に重要です。この「財産目録」の作成は、遺言書作成の基礎となるだけでなく、相続発生後の遺産分割協議をスムーズに進めるためにも不可欠です。

財産目録作成の重要性

  • 相続財産の漏れを防ぐ: 不動産、預貯金、有価証券、貴金属、骨董品、自動車、会員権、著作権など、自身の所有する全ての財産を網羅的に把握することができます。貸金や借入金といった債務も明確にしておく必要があります。
  • 遺言書作成の精度向上: 遺言書で具体的な財産の指定を行う際に、財産目録があれば、漏れなく的確に記述することができます。
  • 遺産分割協議の円滑化: 財産目録があれば、相続人全員が相続財産の内容を正確に把握でき、遺産分割協議がスムーズに進みます。不明な財産があると、調査に時間がかかったり、争いの原因となったりする可能性があります。
  • 相続税申告の準備: 財産目録は、相続税の申告に必要な書類作成の基礎となります。

財産目録作成のポイント

  • 網羅的にリストアップ: 預貯金(銀行名、支店名、口座番号)、有価証券(証券会社名、銘柄、口数)、不動産(所在地、地番、家屋番号)、自動車(車種、登録番号)、貴金属、骨董品、書画、著作権、特許権、ゴルフ会員権、借地権、リース契約、負債(借入金、未払金など)など、あらゆる財産・債務を具体的に記載します。
  • 評価額の目安も記載: 現時点での概算の評価額も併記しておくと、相続税の試算や遺産分割の目安となります。特に、不動産や非上場株式など評価が難しいものについては、専門家の意見を聞くことも検討しましょう。
  • 保管場所・管理方法の記載: 権利証や通帳、証券、契約書などの重要書類の保管場所や、それらの管理方法(パスワードなど)も記載しておくと、相続人が財産を円滑に承継する上で役立ちます。
  • 定期的な見直し: 財産は変動するため、最低でも年に一度は財産目録を見直し、最新の状態に更新することが重要です。

5. 専門家との連携による総合的な相続コンサルティング

相続準備は、多岐にわたる専門知識を要するため、個人で全てを完結させるのは非常に困難です。そのため、弁護士、税理士、司法書士、行政書士、ファイナンシャルプランナー(FP)といった専門家と連携し、総合的なコンサルティングを受けることが、後悔のない相続準備を実現する上で最も重要なポイントとなります。

各専門家の役割

  • 弁護士: 遺産分割協議におけるトラブル解決、遺留分問題への対応、遺言執行、訴訟対応など、法的な紛争解決や代理人として交渉を行います。
  • 税理士: 相続税の試算と節税対策、相続税申告書の作成、税務調査への対応など、税金に関する専門家です。生命保険の非課税枠活用や生前贈与のアドバイスも行います。
  • 司法書士: 不動産の相続登記、遺言書の検認手続き、遺産分割協議書の作成、家庭裁判所への申し立て(相続放棄など)など、登記や法的手続きを代行します。
  • 行政書士: 遺言書の作成支援(特に自筆証書遺言の文案作成)、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成支援など、書類作成に関する専門家です。
  • ファイナンシャルプランナー(FP): 顧客の資産状況や家族構成、将来の希望などを総合的に把握し、相続対策を含むライフプラン全体を考慮した資金計画や保険活用のアドバイスを行います。

専門家と連携するメリット

  • 法的な有効性と税務上の最適化: 遺言書や契約の内容が法的に有効であるか、税務上最も有利な形になっているかなどを専門家がチェック・提案することで、将来のリスクを回避できます。
  • 複雑な手続きの代行: 相続には多くの複雑な手続きが伴います。専門家に任せることで、手間と時間を削減し、正確かつスムーズな手続きが期待できます。
  • 客観的なアドバイス: 家族間では感情的な対立が生じやすい相続問題において、専門家は客観的な視点からアドバイスを行い、円滑な解決をサポートします。
  • 最新の法改正・税制改正への対応: 相続に関する法律や税制は頻繁に改正されます。専門家は常に最新の情報に精通しており、適切なアドバイスを提供できます。
  • 多角的な視点からの提案: 各専門家がそれぞれの専門分野から意見を出し合うことで、一つの問題に対しても多角的な視点からの解決策を導き出すことが可能になります。

相続準備は、単なる財産の分配に留まらず、残された家族の心のケアや、将来の生活基盤の安定に直結する大切なプロセスです。信頼できる専門家を見つけ、自身の状況や希望を正直に伝え、早期から継続的に相談することで、万全な相続準備を進めることができます。


まとめ:円満な相続へのロードマップ

遺言書と生命保険を核とした相続準備は、単に財産を移転するだけでなく、「争族」を防ぎ、残された家族が安心して暮らせる未来を築くための「愛」のメッセージでもあります。

本稿で解説した5つのポイントは、そのための具体的なロードマップとなります。

  1. 遺言書で意思を明確化し、争いを未然に防ぐ: ご自身の最終的な意思を法的に有効な形で残し、不必要な争いを避ける。
  2. 生命保険で特定の相続人に確実に財産を渡す: 遺産分割の対象外で、スピーディーかつ確実に特定の人物に資金を渡す手段として活用する。
  3. 生前贈与と組み合わせた計画的な相続税対策: 長期的な視点で非課税枠や特例を活用し、相続税負担を軽減する。
  4. 財産目録の作成と相続財産の把握: 自身の財産全体を正確に把握し、遺言書作成や遺産分割の基礎を固める。
  5. 専門家との連携による総合的な相続コンサルティング: 各分野の専門家の知見を借り、法的な有効性と税務上の最適化を図り、安心して準備を進める。

相続は「いつか」ではなく「今」考えるべき課題です。この記事が、皆さんの相続準備の一助となり、大切なご家族との絆を守りながら、円満な相続を実現するための一歩となることを願っています。

早川行政書士事務所では、遺言書作成や相続手続き、生命保険に関するご相談など、幅広い相続業務に対応しております。

初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。 あなたの大切な想いと財産を、確かな手続きでしっかりと未来につなげるお手伝いをいたします。



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